弁護士小森榮の薬物問題ノート

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zoom RSS 犯罪が減少する中、覚せい剤事犯は下げ止まり

<<   作成日時 : 2013/03/14 07:36   >>

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私は弁護士として活動を始めて以来ずっと国選弁護人として登録し、一定数の国選弁護事件を引き受けていますが、近年では、国選弁護の割り当てが極端に減ってきました。そういえば、ここ数年、刑事事件が減っているのです。経済状況が沈滞するなかで、日本社会は、犯罪までもが縮小均衡の様相を示しているかのようですが、とりあえず静かで安全な生活環境については歓迎しておきましょう。

ちょうどひと昔前、日本の犯罪情勢はピークを迎えていました。窃盗をはじめとする刑法犯の認知件数は1996(平成8)年以来戦後最悪を更新し続け、2002(平成14)年には369万件を超えました。
当時は、私が仕事で出入りする裁判所、検察庁、警察署、拘置所などのすべてが、急増する刑事事件の対応に追われていたものです。警察の留置施設や拘置所は満員、定員6名の部屋に7〜8名が収容される状況にストレスも高まり、施設内でのささいなトラブルが暴力沙汰に発展してしまうこともありました。平成16年版の犯罪白書には、刑務所での過剰収容状況が取り上げられ、定員を超えた人員を収容するために、2段ベッドで就寝場所を確保したり、食堂に入りきれない収容者が工場の片隅で食事をとる様子が紹介されました。
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↑刑法犯 認知件数等の推移
平成24年版犯罪白書 3ページより転載

さて、悪化の一途をたどっていた犯罪情勢は、2003(平成15)年から好転し、その後10年を超えて現在も減少を更新中です。犯罪情勢が悪化し続けたことを受けて、刑事裁判や矯正処遇に次々と導入された新規政策が姿を現したころには、犯罪の発生はすでに減少ペースに移っていたわけです。
おかげで、最近の首都圏では、警察署の留置施設は余裕たっぷり、拘置所は建て替えが進み、ようやく日本の刑事施設の環境にも、いくらか改善がみられるところまで来ました。

●刑事裁判は大幅に減少、しかし覚せい剤事件は高止まり
裁判所でも、刑事事件の裁判が減少中です。刑事事件の第一審の多くは全国の地方裁判所で審理されますが、そこで扱った事件の推移を調べてみました。参照したのは司法統計年報ですが、現在の集計方式が導入された1999(平成11)年版以降のデータに限定しました。
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↑地方裁判所の刑事事件の推移(小森榮 作成)
司法統計年報 平成11年版〜平成23年版のデータによる

全国の地方裁判所が取り扱った刑事事件の総数は、犯罪多発に対応して増加を続け、2003(平成15)年には82,223人の被告人が審理を終えました。その後事件は減少に転じ、2011(平成23)年の終局人員は57,968人と、ピーク時の約70%にまで縮小しています。
このグラフを作成してみて、改めて、最近の刑事事件の減少ぶりを実感することができました。さらに細かいデータを探してみると、地域別でみると東京高裁管内つまり首都圏と関東甲信地域では、もっとも減少が進んでいて、ピーク時の約60%にまで減っていることがわかりました。なるほど・・・。

ところが罪名別でみると、刑事事件の総数が大幅に減少し続ける中で、あまり変化していないものがあります。問題は、上のグラフに表示した窃盗と、覚せい剤事犯です。覚せい剤事犯はいくらか減少しているとはいえ、全般的な減少傾向に逆らってゆるぎない地位を占め続け、窃盗事犯はわずかながらも増加さえしているのです。
しかも、この2項目は、地方裁判所が扱う刑事事件のうちの、罪名別トップ2なのです。
地方裁判所が扱う刑事事件のうち、もっとも多いのは窃盗事犯で、2011(平成23)年の終局人員は12,399人。実は窃盗事犯はもっと多く、簡易裁判所で審理される軽微な内容の事案(2011年では7,492人)を加えると、日本の犯罪のなかで断然トップを占め続けています。第2位が覚せい剤事犯で、2011年では10,939人。

刑事事件の上位2項目の高止まりを解決することができれば、日本の犯罪情勢は、一気に好転することは間違いありません。では、解決のポイントはどこにあるのか、次回で引き続き考えます。

なお、覚せい剤事犯者の数としてよく目にする検挙人員と、数司法統計で集計される数がかなり違うことにお気づきの方もあるかもしれません。警察が発表する検挙人数と逮捕人数の差、また逮捕されても不起訴になる人数などがあるほかに、司法統計情上、複数の罪で起訴された場合は他の罪名に計上されるものもあることから、差異が生じているようです。

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