弁護士小森榮の薬物問題ノート

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zoom RSS 新生児の尿から覚せい剤|覚せい剤使用罪の立証

<<   作成日時 : 2013/03/09 23:44   >>

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最近、出産したばかりの新生児の尿から覚せい剤が検出されたことから、その母親の覚せい剤使用罪を立証しようとするケースが相次いでいます。
先日、こうした裁判のひとつで、有罪判決の言い渡しがされました。昨年10月、函館市内の病院で出産した女児が仮死状態となり、病院が検査したところ、尿から覚醒剤成分が検出されたとして、その母親を覚せい剤の使用で起訴した事件です。
いっぽう、大阪では、さらに同様の事件が起訴されたといいます。

<ニュース1>*****
●出産した娘から覚醒剤、妊娠中にも使用の母実刑
妊娠中に覚醒剤を使用して出産した女児の尿から覚醒剤反応が出たとして、覚醒剤取締法違反(使用)に問われた函館市・・・無職A被告(37)の判決が6日、函館地裁であった。
大倉靖広裁判官は「被告は出産後も覚醒剤を使用したと述べており、覚醒剤への依存性は顕著で、刑事責任は重い」と述べ、懲役2年8月(求刑・懲役4年)を言い渡した(記事の抜粋)。
YOMIURI ONLINE・読売新聞 (3月7日(木)12時16分配信)
*****

<ニュース2>*****
●乳児から覚せい剤、ロシア人の母逮捕 妊娠中に使用疑い
大阪府警住之江署は28日までに、女児を妊娠中に覚せい剤を使用したとして覚せい剤取締法違反(使用)の疑いで、ロシア国籍で母親の住所不定、自称通訳のF容疑者(37)を逮捕した。出産直後に女児から覚せい剤の反応が出たことから発覚した。大阪地検が27日に同罪で起訴した。
住之江署によると、F被告は昨年12月9日、大阪市の病院で女児を出産。女児がひきつけを起こすなど様子がおかしいため、病院が尿検査したところ覚せい剤の陽性反応が出た。
住之江署は女児の尿を押収。覚せい剤が胎児の段階で胎盤を通じて移ったとみて、同被告が妊娠中に使用したと判断した。同被告は「知りません」と否認している。
逮捕容疑は昨年11月下旬ごろから12月9日までの間、覚せい剤を使用した疑い。
Iza! 産経新聞(2013/02/28 14:57更新)
*****

●このような形で覚せい剤使用が認定できるのだろうか
函館の事件は、出産したばかりの新生児の体内から覚せい剤が検出された、でも、被告人から採取した尿には覚せい剤が検出されなかった、というケースです。おそらく、大阪で起訴された事件も、同様のものだと思われます。

出産直後の新生児の尿から覚せい剤が検出されたとすれば、その母親が摂取した覚せい剤が、胎盤を通じて、胎児の体内に入ったものだろうと考えるのが普通でしょう。出産直後の新生児に、医療関係者が覚せい剤を摂取させるはずはないし、出産や新生児を取り扱う環境に、まさか覚せい剤が混入しているとは誰も考えません。
その母親が覚せい剤を使ったことは間違いないのだから、これを起訴して当然という見方もあるでしょうが、厳格であるべき刑事裁判で有罪を認定する根拠として、はたして十分なのかと考えると、疑問がわいてきます。

覚せい剤使用罪とは、被告人が、いつ、どこで、どんな方法で覚せい剤を使用したかをきちんと認定したうえで成り立つものです。尿から覚せい剤が検出されたとなると、被告人の多くは使用を認め、最終使用について素直に供述しています。しかし、覚せい剤を使った覚えはないと、使用を否認する被告人もいます。たとえ被告人が認めなくても、尿から覚せい剤が検出された場合は、何らかの方法で覚せい剤を体内に摂取したことは疑いないと考えられるので、検察官は、否認のまま被告人を起訴することもあるのです。

その場合、起訴状に記載される公訴事実は、
  被告人は、平成○年○月○日から同年×月×日までの間に、
 ・・・市内およびその周辺で、注射または加熱吸引などにより覚せい剤を使用した。
という形式になります。使用したとする期間は2週間程度の幅で設定され、使用場所は当時の被告人の行動範囲を示しています。

これは、きわめて変則的な方法なのですが、このような手法が許容されているのは、尿中の覚せい剤について厳密な研究が積み重ねられた結果、人が覚せい剤を摂取してから尿に排泄されるまでのメカニズムがはっきりわかっており、尿中に検出された覚せい剤からさかのぼって、その使用の時期や使用した量などをある程度の正確さで知ることができるからなのです。

ところが、新生児の尿から検出された覚せい剤となると、状況は大きく異なります。母親が覚せい剤を摂取してからそれが胎児に移行するまでの時間や、胎児の体内に覚せい剤がとどまる期間なども正確にわかっていません。また、胎児が吸収した覚せい剤は胎児の体内で代謝されて尿中に排泄されるのですが、羊水中に排泄された覚せい剤の一部が再吸収されるという問題もあります。
つまり、現在までに明らかになっている研究データでは、胎児の尿から検出された覚せい剤からさかのぼって、母親が覚せい剤を摂取した時期を特定することは、とてもできないと思われます。
この事情は、毛髪鑑定の場合と同じだと言えます。毛髪中に覚せい剤が検出された場合、その人物が覚せい剤を摂取したことはわかっても、毛髪中に検出された覚せい剤からさかのぼって、それが摂取された時期を特定することができないのです。そのため、毛髪鑑定だけでは、覚せい剤使用罪を立証することはできないとされています。

さて、大阪の事件では、現在のところ被告人は覚せい剤使用を否認しているといいますが、はたしてどのような立証がされるのでしょうか。公判の様子が報道されるのを心待ちにしています。

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