弁護士小森榮の薬物問題ノート

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zoom RSS 対象者はだれか|刑の一部執行猶予制度3

<<   作成日時 : 2011/12/07 23:56   >>

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●入所度数と再犯の関係
前回とりあげた頻回再犯者は、実際にどのくらいいるのでしょうか。矯正統計のなかに、入所者の入所度数に関するデータがありますが、覚せい剤取締法違反での新入所者のうち、今回が5度目以上の入所になるという人が20%以上いるのです。さすがに10度目以上という人は3.2%と限られていますが[1]。
さて、問題は入所度数と再犯リスクの関係ですが、これについては、平成21年版犯罪白書の特集「再犯防止施策の充実」のなかに、覚せい剤事犯者の入所度数と再犯の状況をまとめたデータがありますので、これを参照します[2]。
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■2010年の覚せい剤取締法違反での新受刑者(総数6,569人)
・ うち1度目入所者(初入者)は約32%(2,062人)
・ うち2度目入所者は約20%(1,343人)
・ うち3度目入所者は約15%(1,002人)
・ うち4度目入所者は約10%(644人)
・ うち5度目以上の入所者は約23%(1,518人)
(矯正統計年報・平成22年版・第23表)

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■2度目以降の入所者では過半数が再犯
・1度目入所者のうち5年以内の再犯(再入所)は約37%
・2度目入所者のうち5年以内の再犯(再入所)は約55%
・3度目入所者のうち5年以内の再犯(再入所)は約57%
・4度目入所者のうち5年以内の再犯(再入所)は約58%
・5度目以上入所者のうち5年以内の再犯(再入所)は63%
(平成21年版犯罪白書211ページ)

●再犯防止の重点はどの層なのか
薬物事犯者に対する再犯防止策の目標は、最終的には、入所度数が5度目を超えるような頻回再犯者を減らすことにあると思います。しかし、この段階まできた人たちが生活を建て直すには、実に多くの困難を乗り越えなくてはなりません。また、すでに高年齢にさしかかり、日常的に覚せい剤を買うような生活を続けることができなくなり、自然に再犯のサイクルが長くなっている例もよく見かけます。この人たちには、薬物離脱指導よりも生活を安定させる援助が必要だといえるでしょう。

有効な再犯防止策を講じるには、当然、対象者が若いうちに、別な言い方をするなら初犯者に近い段階で手を打つことが原則といえるでしょう。でも、若い人たちは、自力で問題を克服できる可能性も高いことを忘れるわけにはいきません。
覚せい剤での入所者の場合、1度目入所者のうち、5年以内に再入所(ほぼ再犯によるものと考えてよい)した率は37%で、入所が2度目以降の人たちの再入所率とはっきり差があるのです[2]。ちなみに、覚せい剤取締法違反(使用または単純所持)で執行猶予付き判決を受けた人(ほとんどが初犯者)のうち、4年以内に再犯したのは29.7%です[3]。
つまり、執行猶予判決を受けた初犯者や、初めて実刑判決を受けた1度目入所者の6〜7割は、社会復帰した後に生活を立て直し、自力で更生していることになります。

薬物事犯者を対象とする刑の一部執行猶予制度が導入されるとしたら、常識的にみて、初めて実刑判決を受ける人たち、つまり1度目入所者が主な対象者になるだろうと思われますが、1度目入所者の大多数は自力で更生する力をもっており、この人たちに対して一律に新制度を適用し、再犯防止の名の下に長期間の保護観察を科すとすれば、自力での更生を妨げるおそれも生じます。いま想定されている刑の一部執行猶予制度には、実刑の一部が社会内処遇に置き換えられるという減刑の要素と同時に、出所後も長期間の保護観察を受けなければならないという束縛強化の要素も含まれているのです。

次回に続きます。

<出典>
[1]矯正統計年報・平成22年版・第23表
[2]平成21年版犯罪白書 第7編/第2章・最近の再犯者の動向等
[3]前掲[2]書 第7編/第3章・窃盗・覚せい剤事犯に係る再犯の実態

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