弁護士小森榮の薬物問題ノート

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zoom RSS 罰則は大麻使用に影響するか|ヨーロッパ2011年版報告書

<<   作成日時 : 2011/11/29 23:27   >>

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EUの薬物機関EMCDDA(European Monitoring Centre for Drugs and Drug Addiction)が発表した2011年版年次報告書に、「罰則と大麻使用の関係を探る」という興味深いコラムがあります。
ヨーロッパ諸国では、この10年の間に大麻に関する刑事法制が改正された国がいくつかあります。改正によって罰則の引き下げまたは引き上げが行われる際には、罰則変更が大麻使用にどのような影響を及ぼすかが検討され、予測値や目標値が設定されることになります。
一般論でいえば、罰則を引き上げた場合には使用率が抑制され、罰則をゆるめた場合には使用率は上昇すると考えられています。たとえば、日本では薬物犯罪が急増するたびに、増加を抑止する最も効果的な対策として、罰則が引き上げられてきました。いっぽう、罰則をゆるめる方向で改正が行われる際には、改正が犯罪増加を招くとして強い反対論が提示されるのが常となっています。日本の薬物法では、これまで罰則をゆるめる方向の改正がされた経験はありませんが。

しかし、本当にそうなっているだろうかと、反論を突きつけているのが、下のグラフなのです。
画像

↑EMCDDA, Annual report 2011: the state of the drugs problem in Europe, pp.45

このグラフは、近年、大麻に関する刑事法制に改正のあったヨーロッパ8カ国の、改正前と後の大麻使用率の推移を示したものです。
8カ国のうち、罰則を引き上げた国は点線で示されていますが、イタリアとデンマークの2カ国がこれに当ります。罰則を引き下げた6カ国は実線で示されています。なお、英国の場合は、このグラフでは2004年の罰則引き下げをゼロ点としており、2009年の罰則引き上げは改正後5年目の推移に反映されています。
横軸は時系列で、法制が改正された時点をゼロとして、改正前の年次はマイナスで表示、改正後はプラスで表示されています。このグラフでは、横軸はあくまでも改正前後の経過年数であり、国ごとに表示されている年度が異なっている点にご注意ください。
縦軸は使用率で、15−34歳での使用率を示しています。

罰則を引き上げたイタリア(若草色)の場合、引き上げにもかかわらず、大麻使用率は一貫して増加し、罰則引き上げによる抑止効果は観察できません。デンマーク(赤紫色)でも、法改正は使用率にほとんど影響していないようです。
いっぽう英国(United Kingdom・紺色)では、2004年に罰則の引き下げが行われ、大麻の少量単純所持で逮捕されることはほぼなくなりましたが、使用率の増加はみられず、むしろ急速に減少しています。その後2009年に再度の改正が行われ罰則が引き上げられましたが、グラフの4-5年後の箇所に小さな上昇が示され、短期的な使用率の上昇がみられるという、通説と逆の結果になっています。罰則の引き下げと(時差はあるものの)使用率の上昇が結びついているのは、かろうじてスロバキアとブルガリアだけ。

上のグラフをみるかぎり、罰則の引き上げによって薬物使用を抑止できるという固定概念をリセットして、原点から考え直す必要がありそうです。

[出典]
EMCDDA編『2011年版年次報告書:ヨーロッパの薬物問題の現状 Annual report 2011: the state of the drugs problem in Europe』2011
http://www.emcdda.europa.eu/publications/annual-report/2011

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