弁護士小森榮の薬物問題ノート

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zoom RSS 連邦法との衝突|2010カリフォルニア大麻論争9

<<   作成日時 : 2010/10/07 01:13   >>

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カリフォルニア州では、11月2日の中間選挙時に住民投票事項(プロポジション)19が住民投票に付されます。「大麻合法化案」と呼ばれるこの提案は、概略、次のような内容を含んでいます。下記で公開されている日本語版の投票者ガイドに詳細な説明があるので、参照してください。
<提案の概要>
●州法による個人的使用目的での大麻の所持・栽培の合法化
21歳以上の者は通常、(1) 1オンスまでの大麻の所持・加工・共用・運搬、(2) 民家または個人の土地1件につき25平方フィートまでの面積の私有地における大麻の栽培、(3) 当該地域で栽培した収穫済みおよび栽培中の大麻植物の所持、(4) 上記活動に関連する品目または機器の所持が可能となる。大麻の所持・栽培は個人消費のためのみのものであり、他人への販売はできず、大麻の消費は住居またはその他の「公共でない場所」でのみ許可される。
●大麻関連の商業活動の許可
本法案は、大麻関連の様々な商業活動の許可・規制・課税を地方自治体に許可する。当該活動の許可・規制・課税を州にも許可する。
[出展]カリフォルニア州総選挙公式投票者ガイド
http://voterguide.sos.ca.gov/pdf/foreign-language/japanese-vig-nov-2010.pdf

<連邦法との衝突>
投票者ガイドは、この法案の概要を次のように要約しています。「本法案は、(1) 21歳以上の者による限定量の私用マリファナの所持・育成を合法化し、(2)特定の条件でマリファナ関連の様々な商業活動を許可するよう、州法を改正する。州法へのこれらの改正に関わらず、これらのマリファナ関連の活動は、連邦法では従来通り禁じられる。
これらの連邦法による禁止行為は連邦機関によって従来通り法執行可能となる。それらをどの程度連邦政府が執行し続けるかは不明である。現在、医療目的以外のマリファナ関連の商業活動を許可している州は他にない(12-13ページ)。」
これまで、合衆国内の各州で施行されてきた医療用大麻法令や、オランダの大麻政策、ポルトガルの非犯罪化政策などは、いずれも前提として大麻を非合法薬物と規定しながら、一定の条件の下での使用に対して刑事訴追からの庇護を与えるという性格のものです。ところが、プロポジション19は大麻のレクリエーショナル使用を合法化するという趣旨を含む、これまで導入されてきた多様な大麻政策モデルのどれとも異なるものです。
たしかに、この提案は合衆国の物質規制法と正面から対立するものであるだけでなく、麻薬に関する単一条約などの国際条約とも対立します。仮にこの提案が承認され、カリフォルニアに新しい州法が成立した場合に、これに対して、連邦政府がどのような姿勢をとるのか、まったく予測できないのです。

<これまでの衝突>
1996年11月、カリフォルニア州では住民投票事項215が投票によって承認され、医療目的での大麻の所持と栽培に対しては、刑事罰が科せられないことになりました。これが、いわゆるカリフォルニア州の医療大麻法です。
しかし、連邦法は医療目的での大麻使用特例を認めておらず、たとえ医療目的であっても大麻の所持や栽培は違法行為であり、刑事罰が科されるとしています。また、合衆国の法執行機関であるDEAは、大麻に医療上の用途は認められないと表明してきました。アメリカは、医療用大麻をめぐって、連邦と州との衝突をすでに体験しているのです。

2005年6月、連邦法と州法の衝突に関して、合衆国最高裁判所はその後の指針となる判断を示しました(Gonzales v. Raich)。この判断は、正確にいうと州際通商条項による連邦議会権限の優越性に関するものですが、一般に、カリフォルニア州法に基づいて州内で、医療目的で大麻を栽培したり所持する州民を、連邦政府の法執行機関が連邦法に基づいて刑事訴追することを容認したと理解されています。
この判断が示されたことで、DEAはカリフォルニア州内で医療用大麻供給所を運営する供給業者の摘発を続けてきました。NYタイムズの記事は、1996年にカリフォルニア州の医療用大麻法が成立して以来、カリフォルニア州を中心に100箇所を超える大麻供給所が捜索を受け、その約半数が起訴され、10人を超える供給業者が実刑判決を受けているといいます(NY Times June 12, 2009)。

2009年3月、合衆国司法省は、州の医療用大麻法令を遵守する限り、大麻を使用する患者および供給業者を起訴することはないと発表。同年10月19日には改めて医療用大麻に関するガイドラインとして公表しました。これによって、現在はある種の安定状態が保たれているといえますが、米メディアのなかには「これは一時的な休戦に過ぎない」という見方もあります。
[サイト内の関連記事]
州法と連邦法のギャップ|2009カリフォルニア大麻論争3
http://33765910.at.webry.info/200907/article_21.html

<3つのシナリオ>
今年7月、アメリカの政策分析機関のランド社は、カリフォルニア州の大麻法案に関する影響予測を発表しましたが、「連邦の対応(45-46ページ)」という項目で、仮のこの法案が承認された場合、合衆国政府がどのような対応を示すかは、きわめて重大な問題になると指摘しています。
上述したように、合衆国最高裁は、州際通商条項による連邦法の優越性を是認する判断を示しています。報告書は、連邦法によるカリフォルニア州内での違反者検挙が再び動き出す可能性があることを示唆し、さらに、連邦政府がカリフォルニア州を提訴する可能性もあるとしています。過去の例として、1984年に飲酒許容年齢の引き上げに踏み切った際に、同調を渋る州に対して、高速道路の連邦負担金の10%を留保するという強硬手段に出たことがあげられています。仮に連邦がこのような対抗手段に出れば、カリフォルニアの大麻増収は帳消しになってしまうかもしれません。
しかし、連邦政府は当面は成り行きを静観し、カリフォルニアの州法に直接的な関与をしない可能性もあります。
中間的な見通しとして、大量取引や製造に関しては連邦政府は厳しく対応し、小売や末端の消費に対しては、やや控えめな対応をとるだろうという観測もあります。連邦政府は、自治体が大麻販売に課す税率をにらみながら、法執行の度合いを調整するというオプションもありえると、報告書はいいます。
[出典]
Altered State? Assessing How Marijuana Legalization in California Could Influence Marijuana Consumption and Public Budgets
http://www.rand.org/pubs/occasional_papers/OP315/

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内 容 ニックネーム/日時
今回の選挙は世界が注目する世紀の一戦とも言えますね。
太郎
2010/10/08 06:16

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