弁護士小森榮の薬物問題ノート

アクセスカウンタ

zoom RSS 薬物問題をめぐる報道と問題の実態・2

<<   作成日時 : 2009/10/21 02:19   >>

かわいい ブログ気持玉 1 / トラックバック 0 / コメント 1

2008年から2009年にかけて、薬物問題が頻繁に話題になりました。世間の話題を呼んだニュースをめぐって、報道と世論の虚実について、あらためて問い直してみます。

●大相撲と大麻問題
騒動の発端は、外国人力士のなかに大麻取締法違反による逮捕者が出て、相撲部屋などからも吸引具が発見されたことから始まりました。日本の伝統競技と大麻という意外な組み合わせは、「大麻はここまで蔓延している」という危機感をあおるのに、いかにも好都合だったのでしょう。その後、協会が行った尿検査で複数の力士に大麻使用の疑いがあるとされたことから、メディアはこの話題を取り上げ続けました。
しかし、終わってみれば、結局、一部の外国人力士が大麻を吸っていたというだけの話で終始してしまったようです。

[見過ごした焦点]
■ドーピング検査のあり方■
一連のニュースには、実は、大麻問題にとどまらない重要な焦点が潜んでいました。まず、大あわての相撲協会が行った力士の尿検査の手法に、さまざまな問題が残ったこと。
そもそも、相撲協会が力士の尿検査を行った背景には、スポーツ・ドーピングの問題意識があったはずです。
スポーツ・ドーピングの理念や手法には、すでに国際的な基準が確立しており、検査の手法や判断の方法は詳細に定められています。立会人の監視の下で検体が採取され、精密な化学分析によって禁止薬物の検出が行われ、もしも検出された場合には保存していた同一検体を用いて再度の分析を行い、また当事者の抗弁を聞いた上で最終的な判断が下されるのです。禁止薬物を使用した選手は、記録が破棄されたり、場合によっては競技会への出場資格を失うなど、深刻な制裁を受けることになるだけに、判断は正確に、慎重に行われなければならないのです。
ところが、第1回の尿検査では、あまりにも緊張感のない管理意識が露呈されてしまいました。厳密な化学分析とは原理の異なる簡易検査キットによる判定の段階で、陽性反応の現れた力士を公表してしまったのです。簡易検査キットは、ある程度の精度をもってはいますが、あくまでも予備的なスクリーニングの道具であり、ここで示された陽性反応は、「大麻使用の疑いがある。」ということを示すわけではなく、「さらに精密な検査を要する。」というサインでしかないのです。
大慌ての検査、拙速な発表といった不手際を見過ごし、「大麻使用の疑い」をそのまま報じてしまったメディアが多かったのは、手落ちだったと思います。さらに言えば、「疑い」を素通りして、あたかも大麻使用が証明されたかのような報道も目に付きました。
オリンピックや国際競技大会であれば、ドーピング検査は日常的に行われています。また、ドーピング検査についての基本的な情報は豊富に提供されています。大相撲だから、大麻問題だから、という先入観にとらわれて、このような基本的な問題を見過ごしてしまったとしたら、とても残念です。

■大麻疑惑に対する捜査活動■
もうひとつ、気になった点があります。相撲協会は、尿検査で陽性反応を示した力士があったことを警察に連絡し、その後、警察が関係先の捜索を行ったと報じられました。ここまでは、通常の成り行きです。
しかし、力士たちの大麻所持は確認されませんでした。尿検査で大麻の使用が判明したのに、力士たちが逮捕されないという事態に、世間は戸惑ったのかもしれません。次第に、世論は力士たちへの非難の調子を強め、メディアのなかにはこうした非難をあおる風潮さえみられました。一部の報道が「正義」を掲げて、徹底的な処罰を求める論調を強め始めたのは、このころからでしょうか。正義=処罰という殺伐とした世論が次第に形成されていきました。
警察もまた、世論に押されたのか、世論を追い風としたのか、行き過ぎた捜査活動をしてしまったところがありました。

[副産物]
■大麻取締法と使用罪■
この話題をきっかけに、大麻取締法に使用を処罰する規定がないことが、あらためて世間の注目を集め始めました。
たしかに、日本の薬物規正法の多くは、薬物の使用を罪と規定し、違反者に罰則を定めているのに、大麻取締法には使用罪が定められていません。これは、薬物の法規制を考える上で、避けて通れないきわめて重要な問題です。私は、薬物使用罪というものにこだわり、日本の薬物規正法の多くに使用罪が規定されている背景をさぐってきました。
しかし、「使用した者が処罰を逃れるようでは正義が行われない。」といった論調のなかで、この問題を議論したくないのが、私の本音です。一部メディアの報道が過熱し始めるなかで、私は口を閉ざしてきました。いずれ時期をみて、この問題を正面からとらえて、私自身の考えをまとめるつもりでいます。

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 1
かわいい

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(1件)

内 容 ニックネーム/日時
大相撲の力士の薬物検査でも、大麻の反応が出たが、所持していなかった力士がいて、解雇問題でもめています。

芸能界でも薬物検査という話もあります。かれらは大麻の事は、どう処理するつもりだろう。

医療用大麻の使用や精神疾患者への合成麻薬の使用は、認めてもいいと思うのに。

私は、地道すぎる方法かもしれませんが、定期的なカウセリングや生活面でのサポートを優先すべきと思います。これは薬物だけの問題ではありません。銃器を使用する警察や自衛隊でも同様です。

自己使用を、刑罰対象からはずし、治療やケアを優先すべきとの思いは変わりませんし、今日ののりピーの旦那の論告要旨でも、禁止薬物を使用して、ついには反社会的な暴力事件をおこし、密売組織に資金を提供する事を防ぐのが、本来の目標でしょう。
それを末端の乱用者を厳しく処断する事で、防げるのか? むしろ 仕入れルートの情報提供は必要としながらも、自己使用者には、刑罰の代わりに治療やケアを優先すべき事なのか明らかだと思うし、治療やケアを自ら求めば刑罰対象から外すとしてもよい。

拘置所や刑務所の費用や捜査や裁判所の費用をかけて、
犯罪者を増やし、社会復帰の条件を悪くして、非効率な対応をするより、自己使用者の負担で、治療やケアを行い、その報告を求める方がよほど効率的だ思うのです。

しかし今の風潮では難しいでしょう。小森先生も、この騒動が収まるまで、待たないと仕方がないような気がします。

のら猫
2009/10/21 16:29

コメントする help

ニックネーム
本 文
薬物問題をめぐる報道と問題の実態・2 弁護士小森榮の薬物問題ノート/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる