弁護士小森榮の薬物問題ノート

アクセスカウンタ

zoom RSS 州法と連邦法のギャップ|2009カリフォルニア大麻論争3

<<   作成日時 : 2009/07/25 21:54   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 2 / トラックバック 1 / コメント 0

カリフォルニアなどいくつかの州は医療用大麻を許容する州法を持っていますが、いっぽう連邦政府は医療用を含めてあらゆる大麻を禁止しています。
アメリカにおける大麻規制緩和の切り口として、最初に医療用大麻が注目されたのは、大麻がスケジュールTに指定されて間もない1970年代のことでした。特定の疾病をもつ患者に対して、医師が大麻を処方することを許容した州法が次々と成立しましたが、これに対して、連邦は規制緩和を認めず、大麻を処方する医師の免許を取り消すなどの対抗策に出たため、多くの州では初期の医療大麻立法は廃止されました。
その後、住民投票によって1996年のカリフォルニア州法及びアリゾナ州法が成立しましたが、これが、医療用大麻の第2波の始まりで、その後7州で医療用大麻を許容する州法が成立し、また何らかの制度によって医療用大麻を許容している州もあります。
これらの州法は、医療用途で大麻を使用し、処方し、または供給する、患者、医師、および介護人に対して、より明確に刑事訴追からの保護を与えていますが、依然として州と連邦の法的紛争が続いており、合衆国v.オークランド大麻購買組合(2001)での連邦最高裁決定は、これら州法に規定された医療の必要性による法的保護は、患者に対して大麻を提供する第三者には適用されないとしています。つまり、「医療用」の名目であっても、大麻の提供者は連邦法によって刑事訴追されることがあるという判断が示されたわけです。

今年3月、アメリカのメディアは「司法長官のEric H. Holder Jr.が、販売業者が州法や地域の法令を遵守する限りは、今後は医療用大麻に対抗する行動をとらないと発言した。(ニューヨークタイムズMarch 19, 2009)」と伝え、連邦と州のギャップが解消に向かうという観測を報じました。しかし、6月12日のニューヨークタイムズ紙は、連邦裁判所は医療用大麻薬局の経営者に対して、1年の拘禁刑を言い渡したと報じています。この判決は、医療用大麻の供給者は依然として、連邦法によって科される拘禁刑と直面していることの象徴だといいます。記事によれば、1996年以来、強制捜査を受けた医療用大麻薬局は100箇所以上(ほとんどはカリフォルニア州)で、およそ半数がすでに起訴され、10人以上の経営者が拘禁刑を言い渡されているということです。
The New York Times / Prison Term for a Seller of Medical Marijuana (June 12, 2009)
http://www.nytimes.com/2009/06/12/us/12pot.html

さて、大麻の法規制でもっとも影響が大きいのは、単純所持罪についての取り扱いですが、この点でも、連邦と州の間に食い違いが起きています。
連邦の規定は、大麻をスケジュール1の物質として、単純所持違反に対する罰則をU.S. Code で定めています。スケジュール1は最も厳しく規制される薬物の分類で、ヘロインやLSDなどと共に大麻もこの分類にはいっています。単純所持違反者に対しては、前科に応じた罰則が科されます。
・初犯者に対する罰則
1年以下の拘禁刑もしくは1000ドル以上の罰金またはこれらの併科
・2犯目の場合
15日以上2年以下の拘禁刑もしくは2500ドル以上の罰金
・3犯目以上の場合
90日以上3年以下の拘禁刑および5000ドル以上の罰金
(21 USC 844 - Sec. 844. Penalties for simple possession)

いっぽう、各州の法律も、基本的には大麻の単純所持を禁じていますが、さまざまな措置によって、罰則を緩和する例が見られます。前述の医療用大麻規定のほかに、多くの州で採用されている規定のひとつに、量による線引きがあります。薬物の単純所持違反(薬物の販売を含むものもある)において、所持または販売にかかる薬物の量によって、科される刑罰の幅を区分するものです。たとえばカリフォルニア州では、28.5グラムまでの大麻の単純所持違反に対しては、拘禁刑ではなく、罰金が科されます。なお、量による線引きは大麻に限定した制度ではなく、薬物の種類ごとに線引きする量が定められています。
(参考:Andrews University WIllicit Drug Policies: Selected Laws from the 50 States”2002)

合衆国では、大麻の所持違反は、全犯罪逮捕者のおよそ5.5%を占める犯罪です(U.S. Department of Justice‛Crime in the United States‘2007))。この数を削減していくことと同時に、この大量の違反者に対してどのような処遇をすべきかをめぐって、議論はますます沸騰しています。ちなみに、連邦地裁で判決を宣告された大麻の所持事犯者は2007年では160人(Sourcebook of criminal justice statistics Online)であることから、所持事犯については州法による逮捕者が大半を占めているものと思われます。

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 2
なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー)

トラックバック(1件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
規制緩和について考える
韓国では規制緩和の導入で成功している。日本でももう少し現実的な規制緩和の方法を考えるべきではないか。 ...続きを見る
日本の規制緩和
2009/08/01 19:45

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
州法と連邦法のギャップ|2009カリフォルニア大麻論争3 弁護士小森榮の薬物問題ノート/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる