弁護士小森榮の薬物問題ノート

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zoom RSS 大麻と精神疾患|英国の大麻規制2009年の変更7

<<   作成日時 : 2009/04/29 01:29   >>

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近年、大麻使用が統合失調症の発症に影響を及ぼすという説が注目されています。統合失調症は重大な精神疾患であり、大麻使用がその発症や症状の悪化に大きく影響するとしたら、これは軽視できない問題で、大きな関心を呼んでいるわけです。
多数の症例研究が行われ、またプール分析という手法で多くの研究報告を再評価する試みもあり、次第にその姿が明らかになってきています。

英国(UK)で大麻の規制分類を再検討するに当たって、薬物乱用諮問協議会The Advisory Council on the Misuse of Drugs (ACMD)がまとめた報告書『大麻:分類と公衆衛生Cannabis:Classification and Public Health』は、この問題に関して詳細な検討を加えています。これまでに報告された多くの研究を統計的な方法論から再検討し、再評価するという示唆に富んだ検討がされているのですが、あまりに専門的な内容を含んでいるために、私の知識が及ばない点があり、専門家の意見を聞いてさらに調べるつもりです。

そこで、この報告書の第12章「検討Discussion」から、検討されたポイントのまとめを読んで、大麻使用と精神疾患との関係について、ACMDの考え方のあらましを把握しておきたいと思います。
第12章「検討」から 
Cannabis:Classification and Public Health 30〜31ページ
http://drugs.homeoffice.gov.uk/publication-search/acmd/acmd-cannabis-report-2008

●統合失調症を発症した人への影響
報告書は、統合失調症の患者にとって、大麻使用は症状を再発させ、悪化させ、治療を中断させるなどの重大な影響がみられると警告しています。実際に、治療中の患者が大麻を使用して、こうした影響が現れた事例が、多数報告されているのです。報告書は、治療中の患者が大麻を使用しないよう対策をとる必要性にまで触れています。
「先の報告書でも検討したように、大麻使用によって、統合失調症を有する人の再発の危険性が高まり、症候の悪化が認められ、またしばしば治療の継続を拒絶するという、明確な根拠がある。協議会は、病院に入院中の統合失調症患者が、容易に密売人から大麻を入手しうることを憂慮している。統合失調症患者に大麻を使わないようにさせる取り組みは、精神障害者施設周辺に密売人が近づくことを拒絶する試みと組み合わせられるべきである。(12.7)」

とくに、若年での大麻使用は、統合失調症のリスクを高めると、研究結果は示しています。しかし、一般論として、若年者の大麻使用が統合失調症の患者を増加させるかというと、必ずしもそう言い切れないようです。
「管理下での観察的研究では、精神病性疾患(統合失調症を含む)の形成に顕著な増加が認められたが、人口レベルでは、精神病性疾患または統合失調症の発生増加を伴っているようには思われない。(12.8)」
「総合的に考慮すれば、エビデンスが示しているのは、大麻使用と精神病性疾患の関係性がうかがえるが、しかし微弱なものであると、協議会は考えている。(12.9)」

ただし、遺伝的要因等で統合失調症のハイリスクを負っている人もあり、こうしたハイリスクを負う人にとって、大麻使用は発症の危険性を高めることになります。この人たちは、大麻を使ってはいけないのです。
「大麻を使用する若年者のうち精神病を発症するのは少数に過ぎない。Hickmanらは、統合失調症の発症を防ぐために大麻使用を避ける必要があるのは、若年男性5000人、あるいは若年女性20,000人程度であると推定している。(12.9.1)」

●不安障害、うつ病との関係
「協議会は依然として、大麻使用といかなる気分障害の発症との間にも、因果関係があるとは認めていない。(12.10)」

●ゲートウェイ理論
「協議会は、大麻使用の結果としてクラスA薬物へ進行するリスクが、実質的なものであるとは考えておらず、またそのリスクはアルコールやたばこ使用によるものより小さい傾向があると考えている。(12.11)」

大麻がより危険性の高い薬物へのゲートウェイになるかどうか。この点に関しては、一般の人たちを巻き込んで声高な議論が続いており、両論があります。もともと、オピエートやコカインなどの薬物使用者のほとんどが、最初に大麻を使っているという事実から、大麻使用が、他の薬物への入り口になると言われ始めたものですが、その論理上の矛盾が批判され、論争が続いているのです。最近では、新たな研究による新ゲートウェイ説も提起されたりして、議論はいまだに決着していません。
さてACMDは、「当協議会は2002年に、大麻使用はクラスA薬物への依存に起こしやすくするかどうかについて、明確に述べることはできないと結論を出した。(8.15)」と、いわば中立の立場をとってきています。大麻の作用そのものには、他の薬物への依存を引き出すようなメカニズムは見当たらないが、社会的環境要因によって、大麻使用者が他の薬物を使うことも起こりうるというのです。とはいえ、仮に大麻使用がゲートウェイになるとしても、そのリスクは小さいというのが、ACMDの見方です。

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