弁護士小森榮の薬物問題ノート

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zoom RSS 大麻取締法改正論を批判する―その6

<<   作成日時 : 2008/12/09 23:43   >>

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■論点その2、大麻取締法に使用罪がないのは不備か
2、世界の薬物規正法では使用罪があるのか

使用とは、注射、吸引、嚥下などの方法を問わず、対象となる薬物を自分の身体に摂取することをいいます。

わが国では、使用と所持が薬物犯罪の代表的な類型となっています。例えば,所持のほかに、麻薬では「施用」、覚せい剤では「使用」、あへんでは「吸食」が、それぞれ犯罪とされています(ただし、各概念には多少の差があります)。
ところが、西欧諸国に目を転じてみると、薬物使用(consumptionとか、自己使用目的の所持と区別するためにuse per seと表現されることもあります)という犯罪類型が、現実に取締りの対象となり、薬物犯罪の代表的な類型となっている国は、ほとんど見当たりません。

まず、アメリカ。連邦の犯罪を規定しているUSコードは、所持、製造、分配などの薬物犯罪を規定していますが、使用罪に関する規定はありません。州法のなかには、たとえばデラウェア州のように、使用罪を規定している州もありますが、実際に使用罪で訴追された事例に接した記憶はありません。アメリカでは、末端の乱用者が訴追される代表的な薬物犯罪の類型は、単純所持と取引です(参照したのは、アメリカ連邦に関してはUSコード。州法に関してはIllegal Drugs laws - Information on the law about Illegal Drugs  http://law.jrank.org/pages/11808/Illegal-Drugs.html)。

英国(UK:連合王国)では、法文上はあへんについてのみ使用の禁止規定があり、略式手続の場合は6月以下の拘禁及び/又は罰金、正式起訴の場合は14年以下の拘禁とされていますが、これはあへんに限った「形式的な規定」であると解釈されており、事実上、薬物の使用に関する禁止規定はないものとされています。

しかし、薬物規正法で、使用を禁止したり、使用罪に対して処罰を規定している例がないわけではありません。しかし、現状では、使用罪が適用される例がほとんどないのです。
たとえば、フランスでは、基本的に薬物使用は法令で禁止され、1年以下の拘禁刑及び/又は罰金とされています。(トリートメントによって判決が免除される場合があり、強制トリートメントが命じられることもある。)しかし、1999年、法務大臣によって、単純使用の事案は、他の重要な違反がないかぎり、起訴しないよう勧告がなされ、現在では、刑事罰の対象とはなっていません。

ヨーロッパの事情について、EUの薬物乱用研究機関EMCDDA が提供しているヨーロッパ薬物法制データベースのなかに、具体的な報告書があるので、その一部を引用します。
European Legal Database on Drugs/Illicit consumption of drugs and the law - Situation in the EU Member States(http://eldd.emcdda.europa.eu/html.cfm/index5748EN.html

報告は、EU加盟15カ国について、薬物規正法における「使用罪」の規定と実際の運用を検討したものですが、「一般的に、薬物の個人的な使用が売買などより悪質な事情と関連していないときは、司法当局は、医療的または社会的な手段(あるいは他の形式の代替手段)を代替として選択し、依存者に拘禁刑を科さない傾向にある。」としています。
EU加盟国のなかには、薬物使用を特定の犯罪として禁止している国があり、「フランス、フィンランド、ギリシャ、スウェーデンの4カ国では、薬物使用は、該当する司法制度に従って処罰すべき違反と規定されている。他の5カ国では、薬物使用は、特定の事情(たとえば公共の場で、集団で、あるいは特定の薬物に関係した場合など)がある場合に限って禁止されている。」と報告しています。いっぽう、ドイツ、デンマーク、イタリア、オーストリアでは法に使用を禁止する規定がありません。
興味深いのは、法令上は薬物使用を禁止し、違反に対する罰則を定めている国で、現在は、事実上薬物使用に対して拘禁刑を科すことがないという点です。次回で、各国の事情をもう少し詳しくみていきましょう。

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