弁護士小森榮の薬物問題ノート

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zoom RSS 大麻事犯と青少年――昭和の大麻事犯2

<<   作成日時 : 2008/11/10 02:48   >>

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大麻事犯の検挙人員が1,000人を超えたのが昭和51年(1976年)、その後も検挙人員はゆっくり増え続け、1500人前後という状態が続きます。
1970年代は欧米で大麻乱用が右肩上がりで拡大し続けた時期に当たり、映画、音楽、雑誌などが伝える若者文化には、大麻の情報が氾濫していました。高校生の薬物使用態度を継続的に研究するモニタリング・フューチャー調査では、1977年、78年に上級生クラスの3分の2が、大麻の日常的使用には大きなリスクはないと答え、1979年には第12学年で51%が1年以内に大麻を使用したと回答しています。
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MONITORING THE FUTURE Overview of Key Findings, 2006 14頁
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こうした風潮は、日本にも伝わっていました。若者向けの雑誌ではしばしばマリファナが取り上げられましたが、しかし当時の日本では、まだ大麻は入手しにくい薬物でした。
事情が急に変わったのは、1990年代に入ったころです。平成5〜6年(1993〜1994年)、大麻取締法違反の検挙人員が2,000人を超えます。とくに平成6年では、大麻事犯検挙人員の14.4%を少年が占め、少年の大麻乱用に対する危機感が広まりました。
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グラフは犯罪白書昭和53年版〜平成19年版のデータに基づいて私が作成したものです
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当時の家庭裁判所調査官による論文の一部を紹介しますが、その内容は、そのまま現在の状況にあてはまります。
「近年、東京家庭裁判所では大麻取締法違反で送致される少年の増加が顕著である。白書によれば、同法違反における少年の送致人員は昭和53年に209人とピークを形成した後減少していたが、60年の77人を底として近年再び増加し、平成6年には前年比で21%増の303人と過去最高に達した。少年比でも14%を占め、有機溶剤、覚せい剤に続く少年第三の薬物非行になりつつある。
新聞報道にもみられるように、濫用少年の殆どがイラン系外国人から大麻樹脂(俗称「チョコ」)を購入しており、今日の急増傾向は来日する外国人の増加と密接な関係があると思われる。
少年における大麻濫用の特徴としては、学識別で高校生以上の学生の占める割合の高いことが指摘できる。警察庁の統計によれば有機溶剤、覚せい剤での高校生以上の学生の比率がそれぞれ16%と8%であるのに対し、大麻は34%と、3人に1人は学生といった状況である。調査実務からは、学生の間でテレビや雑誌等のマスメディアをとおして大麻に関する話題や情報がかなり流布しており、「機会があったらやってみたい」という潜在的な動機を持つものが多いという感がある。概して大麻濫用少年は、大麻を「タバコみたいなもの」で「心身に大した害はなく」、「ファッション感覚」で気軽に濫用している。そして補導、検挙を受けて初めて事案の重大さを知るという者が少なくない。」(尾中孝子ほか「薬物非行と少年審判」法律のひろば49巻1号38-39頁、ぎょうせい、1996年)

平成5年ころというと、外国人グループによる変造テレホンカードや薬物の密売が目に付き始めたころです。バブル経済の好調期に、外国人労働者として来日した彼らは、バブル崩壊と共に職を失い、恵まれない仕事を転々とした後、同国人を頼って次第に都会に集まり、変造テレカの密売から、やがては薬物密売に手を広げていったのです。密売人は、コカイン、大麻、覚せい剤と何でも扱っていて、青少年に人気があったのは、チョコ(大麻樹脂)と、アイス(覚せい剤)です。平成7年ころから、覚せい剤での検挙人員が急激に増加し始めることになります。
大麻は、覚せい剤より一歩早く増加を示したことになります。しかし、平成6年をピークとして増加はとまり、その後平成13年ころまで比較的落ち着いた状態が続きます。急激な減少の理由は、私にはわかりません。この時期は、いっぽうでは覚せい剤乱用の急激な拡大が起きており、世間の目は覚せい剤に向けられていたため、大麻事犯の増加とその後の縮小の背景をきちんと分析した資料が見当たらないのです。

私の個人的な推測ですが、このころ、学校で薬物乱用防止教育が行われるようになったことと関係があるのかもしれません。大麻取締法違反で検挙された多数の若者と接してきた私の実感として、大麻についてきちんとした情報を読んだり、聞いたり、まじめに話し合ったりすることで、多くの場合、彼らの大麻濫用にストップをかけることができるのです。彼らに必要なのは、厳罰や誇張した脅しではなく、きちんと話し合うことだと感じています。

《11月11日加筆》
上記に加筆します。
平成7年ころ、大麻事犯の検挙人員が減少したころ、学校で薬物乱用防止教育が始まったと書きましたが、学校教育が開始されたのは平成10年ころではないかと教えてくださった方がありました。まだ詳細を確認していませんが、とりあえず、上記は私の思い違いのようです。とりあえず、仮訂正し、追ってきちんと調べます。

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