弁護士小森榮の薬物問題ノート

アクセスカウンタ

zoom RSS 青少年に大麻を教える その4−アメリカの精神医学テキストの説明

<<   作成日時 : 2008/11/19 00:26   >>

ナイス ブログ気持玉 1 / トラックバック 0 / コメント 0

大麻の問題を青少年に教える際に、私たちを混乱させる事情のひとつに、大麻の精神影響が把握しにくいという点があります。大麻の精神影響に関しては、膨大な研究データが発表されており、そこから導かれる結論は多様で、矛盾したものもあります。大麻の精神影響については議論が多く、いったい何を信じたらよいか、多くの方が戸惑っているのが現状でしょう。

ひとつの参考として、代表的な精神医学テキストが大麻をどのように説明しているか、検討してみます。取り上げるのは、アメリカ精神医学の診断基準として用いられるDSM-IV-TRの解説書として、専門家から医学生や一般人にまで広く読まれている、『カプラン精神医学テキスト』です。私のような素人にもわかりやすく解説している本なので、私はよく、DSM-IV-TRとカプランを併せて読むことがあります。
画像


ベンジャミン・J. サドック編井上令一ほか訳『カプラン臨床精神医学テキストDSM‐IV‐TR診断基準の臨床への展開』メディカル・サイエンス・インターナショナル(2004)
大麻(カンナビス)関連障害はp.467〜471

大麻やアルコールなど精神作用のある物質の使用によって起きる精神上の問題を総称して、物質関連の精神障害と呼びますが、『カプラン精神医学テキスト』は、物質関連障害に96ページを割いています。もっともページ数が多いのはアルコール関連障害(19ページ)で、大麻関連障害には4ページほどが当てられています。まず、大麻中毒を次のように説明していますが、ここでいう中毒とはintoxicationのことで、大麻の作用を受けている状態という意味です。
「一般に大麻中毒は、使用者の外部刺激に対する感受性を高め、見えなかった細部が見え、色彩をいっそう明るく豊富に感じさせ、時間の流れが遅延する感覚をもたらす。高用量では、使用者は離人症や現実感喪失を経験することもある。運動技能は大麻使用によって障害され、多幸感が消失した後も残る。大麻使用後8〜12時間は、使用者は自動車や重機械の操作の障害となるような、運動機能の低下を示す。さらに大麻はアルコールとの相乗効果があり、通常、アルコールと併用されることが多い。」
わが国の薬物乱用防止啓発資料では、大麻の危険性だけを強調して説く例をしばしば見かけます。危険だけを羅列されると、若者が大麻に興味を感じる理由がわからなくなってしまいますが、感覚を鋭敏にさせるという点を考えれば、若者の多くが大麻使用を快体験ととらえていることが理解できることでしょう。薬物がもたらす、楽しく快適な体験と、それに伴うマイナスの作用をワンセットでとらえること。教える側にまず必要なことではないでしょうか。

さらに、大麻使用がもたらす障害として、わが国の啓発資料でしばしばとりあげられるのが、無動機症候群ですが、これについて、カプランの説明を読んでみましょう。カプランではこれを「動因喪失症候群」と呼んでいます。
「動因喪失症候群  議論を呼んでいる大麻関連症候群として、動因喪失症候群があげられる。この症候群が大麻使用と関係しているのか、あるいは大麻の使用とは無関係な性格特徴を反映しているのかが議論されている。元来、動因喪失症候群は、大麻の長期的かつ多量の使用と関連し、課題(学校、職場、あるいは長期的な注意や粘りが要求されるすべての状況)におけるやる気のなさによって特徴づけられる。このような患者は無表情、無反応と記述され、通常は体重が増加し、怠惰になる。」

カプランもいうように、動因喪失症候群(無動機症候群)については議論があります。このように、両論あるものを教えるのは、とても難しいことだと思います。両論を並列するか、どちらかの立場をとるなら、その理由や根拠を示さなくてはなりません。それを省いてしまっては、正しい教え方にならないと思うのです。
教えるって、難しいことです。

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 1
ナイス

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
青少年に大麻を教える その4−アメリカの精神医学テキストの説明 弁護士小森榮の薬物問題ノート/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる