弁護士小森榮の薬物問題ノート

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zoom RSS 大麻取締法の生い立ちを考える・その3―大麻規制をめぐる温度差

<<   作成日時 : 2008/09/09 22:44   >>

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連合国軍の指示(昭和20年(1945年)10月12日付、連合国軍高級司令官H.W.アレン大佐による「日本における麻薬の生産及記録の統制に関する件」)によって、大麻の植付、栽培が禁止され、栽培されている大麻は直ちに除去しなければならないことになりました。これには、当時の農政関係者は衝撃を受けただろうと、私は考えていました。
ところが、このたび詳細な資料を検討してみると、必ずしも、そう単純なことではなかったように思えます。

後日の資料のなかに、断片的に顔を覗かせる、興味深いエピソードを2つ紹介します。

まず1946年3月21日付の連合国軍メモランダムがあります。GHQ/SCAP文書のなかにあるものです。このメモランダムは、「日本における麻薬製品及び記録の管理」という題で、前述の1945年10月12日付メモランダムを徹底するために出された内容です。その第2項に次のような記載があります。
「2、麻薬原料植物及び種子の植付、栽培に関しては、日本政府は、本禁止は播種時期の前に公表され、したがっていかなる植物の除去も必要なかったと述べている。この点に関して禁止が行われていることを確認するためには、各県の担当者に連絡し、麻薬原料植物の植付、栽培を防止するよう監視しなければならない。」
10月12日付の目覚書では「現在植付られ、栽培せられ居る此等のものは直ちに除去すべし、且つ除去せられし量、日時、方法、場所、土地の所有権を連合国軍最高司令部へ三十日以内に届出づべし」とされていました。ところが、連合国軍には除去報告がなく、日本政府に問いただしたところ、この時期には栽培されているけしも大麻もないから、除去する必要はなかったという回答があった、ということでしょうか。
連合国軍側は、この回答に必ずしも納得していない様子を感じ取ることのできる文書です。連合国軍が要求した厳密な麻薬管理の一環として大麻栽培に向けられた、非常に厳しい姿勢と、日本側の当惑、その温度差に注目して、私は資料を読んでいます。

さて、日本側の受け止め方を示すのが、さらに後年の、大麻取締法をめぐる国会審議過程の記録です。実は、昭和23年に大麻取締法が成立した際には、衆参両院の本会議、及びそれに先立つ厚生委員会、いずれもこの法案に関してたいした議論もなく、他の法案との一括審議であっさり可決しています。
この法律について、やや突っ込んだ議論が出てくるのは、昭和25年、大麻取締法の一部改正に関する審議の過程でのことです。
昭和25年3月13日、衆議院厚生委員会の会議録から、厚生省担当者が大麻取締法制定の経緯について説明している部分を抜き出してみます。発言者は当時の厚生省の麻薬課長、正式には厚生技官(薬務局麻薬課長)です。

○里見説明員 (略)それから大麻の取締法を制定したことでありますが、これは先ほど申し上げましたように、日本においては、終戰前までは大麻について何らの取締規則もなかつたのでありますが、メモランダムが出まして、この大麻の取締りを行うことになりまして、もともと麻薬をとります大麻インド大麻というようなものは、国際的に麻薬ときまつておりまして、これは取締りをしなければならない義務を持つております。ただ日本にありました大麻がそれに該当するかしないかということが、これまでわからなかつたわけであります。それがたまたま調査の結果、これが当然該当するということになつた関係で、これは麻薬の原料、薬物として取締りを行わなければならない国際條件の関係もあり、それを履行する義務を日本が負つております関係で、これは将来とも取締るべきものと考えられます。世界の各国を見ますと、やはり大麻をそのまま禁止している国も多くあります。フイリツピンあるいは南鮮、日本等は纎維関係によりまして、大麻の栽培を許可されておるわけであります。もちろん、われわれとしましても、十分にこの大麻が纎維資源として重要であることはわかつておりますので、総司令部の方に懇請いたしまして、麻の資源として必要であります関係で、この生産を認めてもらうことになりまして、現在五千町歩の範囲内で、かつ人員も三万人と押えられておるのであります。実際問題としましては、三万人以上でありますが、それは何人か一かたまりでもつて一人の代表者を出して、そうして栽培させておるというとうな実情でやつておるわけであります。
○里見説明員 (略)ただいまお言葉のありました通り、取締りが嚴重に過ぎて栽培ができないとか、あるいはまた報告を出すとかいう点でやつかいであるから栽培しないというような方もあるかと思います。しかしながらできるだけそういう面を越えまして、希望される方には、栽培できるように、私どもも努力するつもりでおります。どうぞひとつ栽培県におかれましても、そういうような事態がありましたならば、御指導を願つて、あるいは私どもも、県の取締りの係員等にも、この点を十分伝えておきます。将来の取締りについては、十分御意思に沿うような考慮をいたすつもりでおります。
○里見説明員 大麻の取締りでありまするが、大麻は御承知の通り麻の纎維の原料植物であります。これは当初日本におきましては、大麻は麻薬の原料植物であるということを考えておらなかつたのでありまするが、連合軍が進駐以来日本の麻を調べましたところ、これが取締りの対象になるものである。そういうような解釈のもとで、先方よりメモランダムが出まして、これによつて大麻取締法を制定しまして取締ることになつたのであります。そうして今までわが国におきましては、大麻から麻薬をつくつてこれを悪用する、あるいはこれを使用する、そういうようなことが全然なかつたわけでありまして、現在もまたありませんのでございます。しかしながら原料植物である大麻を大量に使いますと、麻薬をとることもでき得るわけでありますので、一応これを取締る必要はあるわけであります。

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