弁護士小森榮の薬物問題ノート

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zoom RSS 大麻取締法の生い立ちを考える・その1―ポツダム宣言の受諾

<<   作成日時 : 2008/09/07 22:21   >>

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最近、大麻取締法が何かと話題になり、そのたびにこの法律について質問を受けることが重なっています。実は、簡単に思える質問でも、大麻取締法について回答するためには、歴史的な背景から始めなくてはなりません。

日本の薬物法規制の出発点は、おそらく上海会議の時代に求めることができるでしょう。しかし、現行法の基本が整備されたのは、第二次大戦終戦に伴いポツダム宣言を受諾したときに原点があると考えてよいでしょう。その後、何度も法律改正がされ、当時の名残は薄れてしまっていますが、現行法を考えるに当って、この時代の検討を避けて通ることはできないでしょう。
この分野は資料も少なく、ちょっと調べるにも手間取るので、私は「いつか」と考えながら先延ばししてきたテーマのひとつです。ま、いつ完成するかわかりませんが、思いついた機会に、ぼつぼつ手をつけてみようと思います。
私自身の勉強ノートを不定期で連載します。

まず、問題のフレームとして、犯罪白書の一節を引用します。
(1) 終戦時の薬物関係法令
 麻薬の取締りに関する法令は明治以降幾多の改廃を経ているが,終戦時においては,明治40年に施行された現行刑法における「阿片煙ニ関スル罪」のほか,(旧々)薬事法(昭和18年法律第48号),(旧)阿片法(明治30年法律第27号)等があった。
 戦後,連合国軍の占領下において,昭和20年9月にポツダム宣言ノ受諾二伴ヒ発スル命令二関スル件(昭和20年勅令第542号)が公布・施行され,連合国軍最高司令官の要求に係る事項を実施するため特に必要がある場合には,命令をもって所要の定めをし,かつ,必要な罰則を設けることとされた。これに基づき,薬物の規制については五つのいわゆるポツダム省令,すなわち,[1]塩酸ヂアセチルモルヒネ及其ノ製剤ノ所有等ノ禁止及没収ニ関スル件(昭和20年厚生省令第44号),[2]麻薬原料植物ノ栽培,麻薬ノ製造,輸入及輸出等禁止ニ関スル件(昭和20年厚生省令第46号),[3]特殊物件中ノ麻薬ノ保管及受払ニ関スル件(昭和21年厚生省令第8号),[4]麻薬取締規則(昭和21年厚生省令第25号),及び[5]大麻取締規則(昭和22年厚生・農林省令第1号)が制定され,これらにより,麻薬,あへん及び大麻に関する規制が行われることとなった。
 法務総合研究所編『平成9年版 犯罪白書』15頁、大蔵省印刷局

昭和20年9月、わが国がポツダム宣言を受諾したことに伴って、昭和20年勅令第542号が公布されます。これは、連合国軍最高司令官の要求に対応して、随時、「命令」という形で必要なことを定め、場合によっては罰則も伴うこことになるという、原則を定めたものです。その後、各分野で発せられた多数の命令は、いわゆる「ポツダム省令」と呼ばれます。

「ポツダム」宣言受諾ニ伴ヒ発スル命令ニ関スル件(昭和20年勅令第542号)
政府ハ「ポツダム」宣言ノ受諾ニ伴ヒ聯合国最高司令官ノ為ス要求ニ係ル事項ヲ実施スル為特ニ必要アル場合ニ於テハ命令ヲ以テ所要ノ定ヲ為シ及必要ナル罰則ヲ設クルコトヲ得
  附 則
本令ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス

薬物規制に関する厚生省令のうち、後の大麻取締法につながるのは、「麻薬原料植物ノ栽培、麻薬ノ製造、輸入及輸出等禁止ニ関スル件(昭和20年厚生省令第46号)」です。この内容をみておきましょう。下記は旧字を現在の文字に改めたものです。

●麻薬原料植物ノ栽培、麻薬ノ製造、輸入及輸出等禁止ニ関スル件
(昭和20年11月24日 厚生省令第46号)
第一条 本令ニ於テ麻薬トハ阿片、コカイン、モルヒネ、ヂアセチルモルヒネ、印度大麻草並ニ此等ノ原料タル植物及種子並ニ此等ノ誘導体、混合物、及製剤ヲ謂ヒヂアセチルモルヒネニハ其ノ誘導体、化合物、塩類、混合物及製剤ヲ含ム
第二条 麻薬原料植物ノ栽培、麻薬ノ製造、輸入、輸出、移動、破棄、使用及販売等ニ関シテハ阿片法、阿片法施行規則、薬事法及薬事法施規則ニ依ルノ外尚本令ノ定ムル所ニ依ル
第三条 麻薬原料タル植物ハ種子ノ植付、栽培、又ハ育成ハ之ヲ為スコトヲ得ズ
第四条 麻薬ノ製造及輸入、輸出ハ之ヲ為スコトヲ得ズ但シ厚生大臣ノ許可アリタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第五条 麻薬ノ輸出ハ之ヲ為スコトヲ得ズ
第六条 生阿片、半加工阿片、阿片煙膏、粗製コカイン、半加工コカイン、ヂアセチルモルヒネ、印度大麻草並ニ此等ニ関スル図書記録ノ移動、破棄、使用又ハ販売ハ之ヲ為スコトヲ得ズ但シ厚生大臣ノ許可アリタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第七条 麻薬ノ取引ニ関スル現存セル記録ハ現状ノ儘之ヲ保管スベシ
第八条 左ノ各号ノ一ニ該当スル者ハ三年以下ノ懲役若ハ禁固。五千円以下ノ罰金、科料又ハ拘留ニ処ス
第九条 法人ノ代表者又ハ法人若ハ人ノ代理人、使用人其ノ他ノ従業員ガ其ノ法人又ハ人ノ業務ニ関シ前条第二号ノ違反ヲ為シタルトキハ行為者ヲ罰スル外法人又ハ人ニ対シ亦前条ノ罰金刑ヲ科ス
 附 則
本令ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
昭和二十年十月十二日以後本令施行前為サレタル第四条乃至第六条ノ規定ニ違反スル行為ニ相当スル行為ハ之ヲ無効トス

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