弁護士小森榮の薬物問題ノート

アクセスカウンタ

zoom RSS 大麻取締法の生い立ちを考える・その10−終戦当時のアメリカ

<<   作成日時 : 2008/09/21 23:20   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 0 / コメント 0

第二次大戦終結後、GHQの指示の下で強力な麻薬規制策が導入されます。その全体像を把握するために、私は今、GHQ公衆衛生福祉局のWEEKLY BULLETINを読んでいますが、随所に、この時期のアメリカで進んでいた麻薬政策に共通する姿勢を感じ取っています。
1940年代の終わりから50年代にかけて、アメリカの薬物管理政策はかつてない厳罰政策を採っていく時期にあたっています。

私が翻訳した『ドラッグ・コート』という本の第1章から、この時代を要約する部分を引用します。
1943年の、連邦検察庁のボストン事務所当局者の意見を見てみよう。このスポークスマンによると、薬物問題は「主に、ほとんど全部と言ってもよいが、法執行の問題であり、非合法な薬物取引を規制することによって、自ずと、薬物依存という問題も管理することになる。医療的な側面は付随的で補完的なものに過ぎない。」この基本的な意見は、1950年代の薬物政策に確実に影響を与えた。そして50年代は、アメリカ薬物政策史上で最も厳しい2つの法案が議会で承認された時期であった。1951年に連邦議会は、薬物犯罪者に対する厳しい必要的最低量刑(mandatory minimum sentences)を定めたボッグス修正案(Boggs Amendment)を成立させた。さらに1956年には、未成年者への薬物の販売に対して陪審員に死刑の選択肢を与え、連邦麻薬捜査官に火器の携帯を認める、麻薬取締法(Narcotics Drug Control Act)を成立させた。モーガンはこの時代について次のように結論している。「薬物使用に反対し、法執行に賛成するコンセンサスが、かつてないほど強まっていると思われた。」
小沼杏坪監修『ドラッグ・コート』46〜47頁、丸善プラネット(2006)

マンデトレー・ミニマム・センテンスとは、麻薬事犯者に対して、刑の執行猶予やパロール(仮釈放)を認めず、一定期間の実刑を科すよう定めたもので、初犯者に対しても2年の拘禁刑が定められていました。この時期、アメリカ連邦の麻薬取り締まりは、連邦麻薬局(FBN:Federal Bureau of Narcotics)長官をつとめたアンスリンガーという人物の強力な指揮下にあり、「初犯時に厳しい刑を科すこと」が彼の信条だったと伝えられるなど、一連の厳罰政策は、とかく、アンスリンガーの強硬姿勢と重ね合わせて語られることが多いようです。
しかし、上記に引用したように、「もっと厳しく」という社会的なコンセンサスがあったことを忘れてはならないでしょう。

そういえば、David F.Mustが‘The American Disease’のなかで、たいへん興味深い指摘をしていることを思い出して、その部分を読み返してみました。

Mustoは、第一次大戦後の1919年から1920年と、第二次大戦後の1951年から55年という時期には、麻薬管理において、注目すべき類似がみられるといいます。この2つの時期には、ともに中毒者や中毒者に薬物を供給した者に対して、懲罰的な制裁を科すことが行われました。「中毒に対する寛容さは、弱い心や間違った知識による危険な弱点であると攻撃され、彼らのなかには邪悪なたくらみを抱く者があるに違いないとされた。心理学や薬理学とは関係なく、大衆は中毒者に対して危険意識を共有した。」David F.Must‘The American Disease’p.232,Oxford University Press(1999)

さらに付け加えるなら、その後の歴史のなかで、アメリカ社会が薬物使用に対して不寛容な態度を強めた1980年代は、ベトナム帰還兵がアメリカに社会不安を投げかけた時期であり、そしてここ数年やや不寛容さを強めているかに見える背景には、イラク帰還兵の存在が影響しているかもしれないと思い至ります。

さて、第二次大戦後のアメリカが、薬物使用に対して極度に不寛容な態度を示し、中毒者を厳しい罰則で取り締まることを求めた時期に、日本は、GHQの指揮下で薬物規制策の抜本的な建て直しに着手したわけです。対策の重点が、徹底的な取り締まりに置かれたのも無理のないことだったと思われます。

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
大麻取締法の生い立ちを考える・その10−終戦当時のアメリカ 弁護士小森榮の薬物問題ノート/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる