弁護士小森榮の薬物問題ノート

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help リーダーに追加 RSS 即決裁判の現況―薬物の自己使用や少量所持事案の場合

<<   作成日時 : 2008/08/14 17:58   >>

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2006年10月から、刑事裁判の一部に「即決裁判」という新しい制度が導入されています。即決裁判とは、争いのない明白軽微な事件(殺人や放火等の重大な事件を除く)に限って、被疑者が同意することを条件に、検察官が起訴と同時に申立てを行い,裁判所の決定によって開始される手続です。
即決裁判では、被告人に有利な点がいくつかあります。まず、懲役または禁錮の判決を言渡す場合には、その刑の執行を猶予しなければならないと定められています。つまり、確実に執行猶予付き判決を受けることができ、しかも起訴された時点で結果がわかるわけです。第2に、起訴から2週間くらいで公判が開かれ、正式裁判より簡略な手続きで短時間の審理を行い、その日のうちに判決が言い渡されます。従来の正式裁判では、起訴から判決まで50日前後かかっていたのに比べ、ずいぶん迅速化されることになります。

薬物の自己使用や少量の所持事案は、当初から、即決裁判の主要な対象事件とされてきました。実際に導入された状況を統計資料で検討してみましょう。参照するのは、最高裁判所事務総局編『司法統計年報 2刑事編 平成19年』法曹会(2008)です。

●覚せい剤取締法違反事件の被告人
平成19年中に全国の地方裁判所で裁判手続を終局したのは10,837人。裁判の結果、執行猶予付き判決を言い渡されたのは4,530人でした。このうち即決裁判手続きを受けたのは1,306人で、執行猶予付き判決を言い渡された被告人の3人に1人が即決裁判で審理されたという結果です。
●大麻取締法違反事件の被告人
平成19年中に全国の地方裁判所で裁判手続を終局したのは1,287人。執行猶予付き判決を言い渡されたのは1,097人でした。このうち即決裁判手続きを受けたのは358人で、執行猶予付き判決を言い渡された被告人の3人に1人強が即決裁判で審理されたという結果になりました。

即決裁判手続は、明白かつ軽微な事案で、争いがなく、証拠関係に問題がないことなど、細かな基準があり、全ての事件に適用されるわけではありません。また、判決に対して、原則として事実誤認を理由として上訴することはできないなど、刑事司法手続の基本的な部分で、当事者に対して十分に説明し理解してもらう必要のある点もあります。とはいえ、迅速な裁判によって被告人の負担を軽くする第一歩として、おおむね順調なスタートをきったようです。
私自身も、数件の即決裁判を担当しました。逮捕されて間もなく弁護人として受任していた事件では、即決裁判のメリットを大いに感じることができましたが、起訴後、即決裁判の申し立てがあった時点からスタートする国選弁護の事案では、2週間という限られた時間で事件を把握して裁判に臨むためにせわしない思いをし、被告人に対して再犯防止に向けた動機付けをしたり、社会復帰後の環境調整を図るには困難を感じたことも事実です。何より、すでに執行猶予判決を受けられると安心し、釈放されるまでの日数を数えている被告人と向き合う裁判官の苦労についても、考えさせられるところもありました。

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