弁護士小森榮の薬物問題ノート

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zoom RSS 改めて大麻を考える その20

<<   作成日時 : 2008/05/30 23:52   >>

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国連薬物犯罪局(UNODC)の『世界薬物報告書2006』第2章、CANNABIS: WHY WE SHOULD CARE を読みながら、改めて大麻について考えています。

ここからは、大麻の精神作用をめぐって議論されている問題点を拾い上げ、これまでの議論の流れをまとめ、新たな研究によって見出された情報を検討する、といった内容です。

日本では大麻の乱用がまだ比較的少ないため、大麻をめぐる研究の動向や世論の変化について、あまり知られていませんが、欧米では1970年ころから今日に至るまで、大麻の影響に関する激しい論争が続けられています。膨大な科学的研究も進められていますが、研究結果にも、矛盾するものが見当たります。
いささか無責任な巷説まで加えれば、大麻の影響に関してはありとあらゆる説があり、正直なところ、大麻に関しては、どの情報に立脚すればよいのか、戸惑うこともあります。

●大麻と攻撃性
大麻と攻撃性、あるいは大麻と犯罪の関連。これも長く議論されてきたテーマのひとつです。アメリカでは、犯罪逮捕者に対して任意の薬物検査を行っている例がありますが、最も多く検出されるのが大麻です。たとえば最近の報告書のひとつ「サンディエゴにおける逮捕者中の薬物使用2006」では逮捕者の男性では48%、女性では49%が過去30日以内に大麻を使用したと申告しています(尿検査ではなく)。こうした結果から、大麻使用と犯罪を単純に結びつけて考えてしまいがちです。
逮捕者中の薬物使用調査として
・例えば全国的な調査Arrestee Drug Abuse Monitoring Program(ADAM)
  http://www.ncjrs.gov/pdffiles1/nij/193013.pdf
・サンディエゴ地域の調査2006 Adult Arrestee Drug Use in the San Diego Region http://www.sandag.cog.ca.us/uploads/publicationid/publicationid_1321_7241.pdf
これは、一見するととてもわかりやすい話です。ところが、データの詳細分析や他の調査研究によって、逮捕者調査のデータは、大麻使用と犯罪の関連を示すものではないとされたのです。

さて、『世界薬物報告書2006』は、大麻の主な作用は中枢神経抑制作用であり、暴力と結びつくことはほとんどないという見方が、西欧社会で優勢であることを認めています。しかし、「特定の薬物の作用は単に化学的作用によるものではなく、むしろユーザの状況、考え方、およびそのじかに接する環境と化学の相互作用である」と指摘しています。さらに「用量によっては、大麻は鎮痛剤や鎮静剤ではなく「幻覚剤」と位置づけられる。多くの生物にとって、低用量のデルタ-9THCによる行動の特徴は、中枢神経における沈静作用と興奮作用が混合した特有のものである。心拍数は高く、体温は低下し、よかれ悪しかれ、思考過程が撹乱される。大麻を気分高揚剤と考えているユーザーもある。」といいます。
大麻と暴力の関係、勝論を出すにはまだ早いということでしょうか。

●ゲートウェイ仮説への新しい証拠
これもまた、論争の的になってきたテーマです。この部分は、話が微妙なので、そのまま引用します。私の翻訳があまりうまくないので、興味のある方は原文を確認してください。

「大麻の影響をめぐる長年の議論のひとつは、いわゆる‘ゲートウェイ'仮説、すなわち、大麻は他の薬物使用への門を開くという説である。初期のこの分野での業績の多くは、post hoc ergo propter hoc(これの後、従ってこれ故に)という因果関係理論の誤りを受けている。他の薬物のユーザーの多くが最初に大麻を使用したと報告している事実は、この2つの行動の間の因果関係を示しておらず、調査データをざっと検討しただけでも、大麻を試した人の大半が、他の薬物に移行していない事実がわかる。しかしながら、近年のより完成度の高い研究は、この議論には、初期に示された以上の実態があるかもしれないと示唆している。オーストラリアで、ある注目すべき双生児研究が行われた。全国から集められた311組の同性の双生児ボランティアを対象とした。ある双子は17歳になる前に大麻を使い、別な組は使っていない。17歳以前に大麻を使った人は、双子のもう片方と比べ、他の薬物の使用、アルコール依存、薬物乱用/依存を経験する可能性が2.1〜5.2倍であった。既知のリスク要因のコントロールには、ごくわずかな影響しかなかった。報告者は、早い年齢での大麻使用と後年での薬物使用、乱用/依存との関連性は、遺伝的要因や共有された環境のみで説明できないものであるとする。この関連性は、大麻を入手したり使用したりするなかでの友人関係や社会的要因からも起こりうる。とくに、早い年齢で大麻に接触し、使用することで、他の規制薬物使用に対する障壁の認識を引き下げ、こうした薬物への接触を促進することもありうる。」
国連薬物犯罪局編『世界薬物報告書2006』第2章 183頁
http://www.unodc.org/unodc/en/data-and-analysis/WDR-2006.html

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