弁護士小森榮の薬物問題ノート

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zoom RSS 改めて大麻を考える その12

<<   作成日時 : 2008/05/17 18:24   >>

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国連薬物犯罪局(UNODC)の『世界薬物報告書2006』第2章、CANNABIS: WHY WE SHOULD CARE を読みながら、改めて大麻について考える連載に戻ります。

第3節 The emergence of ‘new cannabis’and the reassessment of health risks
●「新大麻」は過去10年で効力を2倍に高めた  の続きです。
同報告書では、いくつかの大規模調査や、各国からの回答書に基づいて、最近の世界の大麻情勢を具体的に分析しています。
そこで指摘されている主なポイントは次のようなものです。
@ 世界各地で大麻の生産が行われており、生産量が増加している。
A 欧米は大麻の大市場であり、そこでは大麻栽培が屋内に向かう動きがみられる。
B 屋内栽培で生産される大麻の主要な部分は、より効力の強いシンセミアであり、栽培技術の進歩によって、強力な効力を持つ大麻が生産されている。
C 欧米では、消費される大麻の効力が全般的に強くなっており、過去10年でおよそ倍の強さになった。

ところで、この文章の最後の部分に、大麻の需給状況が少しずつ変化していることを予期させる、興味深い記述があるので、引用します。

「薬物を頻繁に使用する者の間では、個人的使用のための栽培をおこなう割合ははるかに高い。オーストラリアでの常用者調査では、回答者の3分の2が、自ら使用するために大麻を栽培しており、また半分近くが使用する大麻のすべてあるいはほとんどを栽培していた。この傾向は、オーストラリアのように大麻の生育に適した地域だけにとどまらない。連合王国では、常用者としてサンプリングした対象者の63パーセントが、これまでに大麻を育てたことがあり、育てた大麻の平均は24株であった。連合王国の常用者が使用する大麻のうち、自家栽培によるものの割合は、1997年には30パーセントにすぎなかったものが、2005年には66パーセントになったと推定されている。もしこの推定が正確であるなら、この国で、大量の大麻が生産され、無料で配布されていることになる。ある研究は次のように指摘している。『イングランド及びウェールズにおいて、消費される大麻の半分近くが国内で栽培されている可能性がある。栽培のなかには、商業ベースで行うものもあるが、大半は個人的使用や友人たちと使用するための小規模なものである。』
 研究は、こうした小規模生産者が、しばしば自分が使わない分を社会的な付き合いのなかで販売すると示唆している。合衆国の国家調査のデータによると、過去1年間に薬物を買ったと回答した者の大半(78パーセント)が、‘友人’から買ったと回答している。オーストラリアでもこの数字は70パーセントであり、ディラーから買ったという回答は14パーセントにすぎない。大麻使用者の国際比較調査では、ブレーメンでは80パーセント、サンフランシスコでは95パーセントとさらに高い割合になる。アイルアンドでは、知らない人から買ったのはユーザーの1パーセントにすぎない。社会的な人間関係のなかでも輸入品を扱うことはあるだろうが、国境を越えて薬物を運搬する仕事は、プロに支配されることになるだろう。これと対照的に、屋内での小規模な生産の場合は、友人に販売されることが多いであろう。」
国連薬物犯罪局編『世界薬物報告書2006』第2章 176頁
http://www.unodc.org/unodc/en/data-and-analysis/WDR-2006.html

大麻の栽培が拡大するとすれば、部分的には、自給自足による供給ネットワークが生まれる可能性があるわけです。もし、こうした自給自足による供給が拡大するとするなら、そこに新しく功罪の両方が生まれることになるでしょう。

功の効果としては、発展途上国から先進国へと流れる大規模で国際的な大麻の流通がいくらか減少し、その流通によって利益をあげてきた犯罪組織に流れ込む資金が、多少は減ることが期待できるかもしれません。しかし、途上国での生産技術がいつまでも未開であるとは限りません。やがては、途上国から大量の強力大麻が供給されるようにならないという保証はないのです。
罪の波及としては、現在は自給目的で、個人的に小規模で行われている栽培者の中から、急速に拡大し、大規模生産を目指すものが必ず登場するという点が危惧されます。私は、最初は自己使用目的で薬物を入手していた薬物乱用者の一部が、いつの間にか密売人になり、犯罪組織との関係を強めてしまう例をたくさん見てきました。巨大な違法市場がある限り、そこで生まれる巨大な不法利益は、新たな犯罪者を生み出す温床になりがちです。末端のユーザーの目には見えにくいことですが、大麻をめぐる巨大なアングラマネーの存在を忘れてはいけないと思います。

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自家栽培というのは、それだけ技術が進歩し手軽になったことが大きくあるように思います。大麻栽培といっても、他の植物と特別違うやり方があるわけでもない、普通の園芸と変わりないからです。
また欧米などで行なわれる大麻の自家栽培のモチベーションは、「非合法組織に接触することなく、大麻を自給自足しよう」というものが多くあるようです。これは、アメリカのマリファナカルチャー雑誌が提唱していることでもあり、それが広まっているのでは、とも考えられます。
とはいえ、それまで非合法組織の専売特許でもあった非合法薬物の生産が、素人でもできることになり、素人がヤクザに替わってバイニンになる傾向は、ニュースをみても明らかなように、現実に起こっている現象といえるでしょう。これでは広範囲に広まっていく危険性は増えるかもしれません。
ただし、国内の状況では、去年の大学ラグビー部員の事件から、栽培に絶対条件である大麻の種子が、今では販売されなくなってきているため、多少は抑止がかかっているようにも思います。もっとも、これが地下に潜り、非合法組織の新たなしのぎになる危険性も、孕んでのことになります。
日鷲
2008/05/17 20:08

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